ぎょしゃ座 Auriga(Aur) 


 冬の夜空に淡い天の川が流れていますが、もう日本では殆ど見ることはできませんね。その淡い冬の天の川にある五角形の星の並びが、ぎょしゃ座です。将棋の駒のように、比較的整った形なので、どちらかというと分かりやすい星座です。
 このぎょしゃ座のモデルは、女神アテナの子供で、アテネの王様エリクトニオスと呼ばれています。彼は足が不自由なため、四頭立ての二輪車の馬車(さながら古代の戦車ですかね)を操り、戦場を駆け巡った猛者と伝えられています。しかし星座絵で見たぎょしゃ座は、そのような猛者とは想像もつかない優しそうな老人が子ヤギを抱えている姿です。しかしこの星座絵は、古くバビロニア時代から描かれたものであり、当時はヤギを抱いた老人の姿に見立てたものが、現在まで残っており、それに神話を当てはめたような感じですね。
 この星座の見どころは、ヤギの位置で輝くカペラです。カペラは雌ヤギを意味するラテン語で、名前の通りですね。この星のスペクトル分類はG型で太陽とほぼ同じ表面温度ですが、連星であることが分かっています。
 またその隣のε星(アルマーズ)は変更範囲が2.9等〜3.9等の食変光星ですが、減光の期間が長く(約2年)、変光のメカニズムが説明できず、長い間研究対象にされた星です。私事ですが、子供のころ博物館で見た、恒星の大きさ比べという展示物で、ぎょしゃ座ε星(伴星)がやたら大きかったのを覚えています。これは主星を隠す伴星がとんでもなくでかくないと当時は説明できなかったのでしょうね。最新の研究では、伴星は暗い塵に囲まれた恒星であると考えられています。次回のε星の減光は、2036年〜2038年に起きると言われています。
 さて、最後にこの星座は天の川にありますが、天の川に沿ってM36、M37、M38という3つの見事な散開星団があります。双眼鏡で見ると、天の川の中に輝く星のきらめきが非常に美しいですよ。