ケフェウス座 Cepheus(Cep) 


 ケフェウス座ははくちょう座のお尻に輝く1等星デネブとカシオペヤ座の間に見えるややいびつな五角形の星座です。モデルは古代エチオピアの王ケフェウスをかたどっています。
 神話では、ケフェウスはカシオペアの夫であり、アンドロメダ姫の父親です。アンドロメダ姫をめぐる神話の詳細は、カシオペヤ座で述べているので、詳しい話はここではしませんが、神話の中では星座を形作る星同様にケフェウス座にはあまり目立った活躍も存在感もありません。
 ところで、天文学の歴史の中で、この星座の中にある星が大きな役割を果たしています。それはケフェウス座δ星(通称ケフェイドあるいはセファイド)と呼ばれている星です。この星は5.366日の周期で、3.5等〜4.4等まで変化する脈動変光星で、周期が長いほど、絶対光度(星の本来の明るさ)が大きいという関係が知られています。つまり遠い天体にセファイドを見つけたら、その周期を測定することでその星の見かけの明るさと本来の明るさの差からその天体までの距離がわかるのです。
 この関係を用いて、20世紀初頭にアメリカのエドウィン=ハッブルはアンドロメダ大星雲までの距離を測定し、90万光年(現在はデータの蓄積により230万光年となっています)という数値を導き出し、私たちの天の川銀河以外の天体であることを証明したのです。つまり宇宙は私たちの住む天の川銀河だけではないということを証明したのですね。宇宙がドンと広がったわけです。その後、多くの大星雲の中に見つけられたセファイドから、それぞれがたがいに独立した銀河であることが分かるようになったのです。
 またこの星座にはガーネットスター(ケフェウス座μ星)という紅の星が見えます。この星は太陽の1500倍以上の大きさがある赤色超巨星で、3.5等〜5等を730日余りの周期で変光する、脈動変光星です。明るいときには肉眼でも赤っぽい星が輝いて見えます。