はくちょう座 Cygnus(Cyg) 


 はくちょう座はこと座のベガ、わし座のアルタイルと共に夏の大三角を形作るデネブを頂点に比較的明るい星が十字を作る形で並んでいる星座です。これは南十字に対して「北十字」と呼ばれていますが南十字星よりずっと大きく見えますね。 またこの星座は夏の星座と言われながら、晩秋から冬まで西の空の日没後に西の空に立てられた十字架の姿がはっきりと見ることができますし、また春先の遅い時間にはすでに東の空に見えているというほぼ1年を通してみることが出来る星座のひとつです。そういえばそのうちこの星座のδ星が北極星になるのですから、眠らない星座になるのも遠くないかもしれません。(もっとも数千年後の話ですが)
 はくちょう座は天の川の中にある星座ですので、見所はいくつかあります。まず、はくちょうのお尻の星デネブですが夏の大三角の中では最も控えめに輝いている星ですが、それは暗いからではなくベガ(約25光年)やアルタイル(約17光年)と比べて比較にならないほど遠くにある(約1400光年)星だからです。仮にベガやアルタイルと同じ位置に置くと、金星はおろか三日月程度の明るさでギラギラ輝くと言われています。重さも太陽の15倍程度と推測され、やがては(といっても数千万年後)超新星爆発をしてブラックホールか中性子星になると考えられています。
 デネブの近くには散光星雲NGC7000(北アメリカ星雲)やペリカン星雲など赤い星雲が写真を撮るとわかります。空が本当に暗く澄んだ所では肉眼でもボーっと見えるようです。
 またくちばしの星アルビレオは天上の宝石と例えられ、オレンジと青色の美しい色彩のコントラストを見せてくれる二重星です。この星は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にもアルビレオの観測所として登場しています。
 他にも白鳥の首の中央付近のη星近くにははくちょう座X-1というブラックホールの最有力候補の天体が存在します。眼視ではもちろん見ることができませんが、この方向から来るX線が非常に複雑な波形を示しており、ブラックホールと考えられています。
 他にも白鳥の羽に位置するε星(ギェナー)の近くに、網状星雲という数万年前に爆発した超新星の残骸が大きく広がっているのが写真などを撮るとわかります。双眼鏡でも円状に広がる網のような姿が本当に暗く澄み切った空のもとに行くと見えるかもしれません。