こと座 Lyra(Lyr) 


 こと座は、春の終わりに北東に輝くベガとその脇に見える平行四辺形の形をした4つの星の並びで作られる星座です。ベガは七夕のおりひめ星としても知られている全天で4番目に明るい星で、夏の夜空では一番明るい光を放っています。また西暦14000年ごろには地球の歳差運動により、北極星として輝いていることでしょう。
  こと座のモデルは、琴の名手オルフェウスがアポロンより譲り受けた琴と言われています。神話はオルフェウスの妻エウリュディケが毒蛇に噛まれて死んだのを悲しみ、冥界の王ハデスのもとに行き、妻を戻してくれるように頼み込んだところから始まります。最初は渋っていたハデスでしたが、オルフェウスの琴の調べに心を動かされて、これを許しました。地上に出るまで、決して妻のほうを振り向くなという条件をつけて・・・。
 やがて二人が地上へ帰る途中、オルフェウスは足音も気配も感じない妻が本当について来ているのか不安になり、もう少しというところで後ろを振り向いてしまいます。哀れ妻は再び冥界に連れ戻され、失望したオルフェウスは琴と共に川に身を投じて死んでしまいました。やがて川を流れていった琴をゼウスが拾い上げ、星座にしたといわれています。
  さて、こと座にはM57という惑星状星雲があります。太陽程度の星が最期を迎えるときにガスを吹き飛ばしますが、それが中心の白色矮星に照らされて綺麗に輝いている星雲です。さながら牽牛が織姫にあげた結婚指輪のように・・・小さな望遠鏡でも見えるので、ぜひ見てみてください
  またベガにはもうひとつの物語があります。かつての大東亜戦争(太平洋戦争)末期に日本軍の爆撃機「銀河」は明るい星を頼り(天文航法)に夜間飛行を行って敵に対して夜間爆撃を行っていました。その偵察員と航法に必要なデータを作る女学生の哀しい物語がプラネタリウム番組「戦場に輝くベガ〜約束の星を見上げて〜」になったことがあります。今、平和の中で私たちが見ている星々もかつては兵器として使われていたのですね。