おうし座 Taurus(Tau) 


 おうし座はオリオンの西側で、まさにオリオンに襲いかかろうとしているような星の並びでつくられた星座です。ですが、神話の中ではオリオンと敵対したわけではなく、大神ゼウスが化けた白い牛で、美女エウロ-パをさらって海を渡った時の姿になっています。
 しかし、何度も何度もゼウスは様々な動物(星座になったのも、おうし座のほかにわし座、はくちょう座)に化けて、自分の気に入った人間を男も女も問わずによくさらったち、交わったりするものだ…そのエネルギーはどこから来るのかと思いたくなりますね。現代のおっさんにも通じる茶目っけを感じます。
 神話では、ある日エウローパと侍女たちが美しい野原で遊んでいるのを見つけたゼウスは、一目でエウローパを気に入ってしまいます。しかしそのままの姿で行くわけにはいかないので、自らを白い牛に化けて、放牧している家畜の中に紛れこみました。エウローパは美しく、白い大人しい雄牛に気を許して、つい背中に乗ってしまいます。すると雄牛はすごい勢いで走りだし、あっという間に地中海からクレタ島に行ったと言われています。その後、雄牛はゼウスの姿に戻り、エウローパの間に3人の子供をもうけ、その後この地域一帯はヨーロッパと呼ばれるようになったということです。
 余談ですが、木星の衛星にエウロパというのがありますね。これはこの神話に出てくるエウローパが語源です。他にもガニメデ(みずがめ座)、カリスト(おおぐま座)、イオ(ゼウスの恋人)とゼウスを惑星の王者である木星に見立てて、その周りの大きな衛星にゼウスに関連した人々の名前を付けているようです。
 さて、おうし座の1等星アルデバランが右目辺りにあります。オレンジ色に輝く星ですね。そのあたりに見えるV字型の星の並びを、ヒアデス星団といいます。またおうし座の肩のあたりには、平安時代のエッセイスト清少納言が「ほしはすばる・・・」(星はすばるが一番美しい)と枕草子に書いたプレアデス星団(和名:すばる)が輝いています。肉眼でも目の良い人は5〜6個は見えますが、双眼鏡で見ると数十個の青白い星が輝いているのが分かります。美しい眺めですよ。
 すばるは生まれてから数千万年程度で、星としては非常に若いのですが、青白い星の燃料消費は非常に激しいので、1〜2億年のちには、超新星爆発をして消し飛んでしまうと考えられています。人間感覚でいえば永遠の時ですが、星の寿命から見ればあっという間です(太陽は生まれて45億年…あと50億年輝き続けると考えられています)
 またおうしの右の角先端の上にM1と呼ばれるかに星雲があります。これは1054年に現れた超新星の残骸で、望遠鏡で見るとかにの甲羅のように見えるので、かに星雲と呼ばれています。