望遠鏡で星空を見る
星を見るのにお手軽な方法は、やはり肉眼ですが、もっともっと見てみたいと考えたとき双眼鏡や望遠鏡が必要となります。ここでは、先ほどの双眼鏡に引き続いて、望遠鏡についてその種類、構造と望遠鏡のお勧め天体を紹介したいと思います。
望遠鏡とは??
天の川やすばる、月やプレセペ星団やアンドロメダ大銀河など、大きい天体は双眼鏡の威力を遺憾なく発揮できますね。
ただ、惑星や遠い星雲、銀河となると双眼鏡では力不足になります。
というわけで、望遠鏡となるのですが・・・双眼鏡に比べて高い、大きい、扱いにくいと三拍子揃えば、二の足踏むのも当たり前
じゃ、どんな望遠鏡がいいの?
その疑問に答えるために、ここでは望遠鏡の仕組みからメリット・デメリットまで私の持っている機材を中心に解説していきます。
望遠鏡の種類
望遠鏡は、その構造から「鏡筒部」「架台部」に分けることができます。
まず、鏡筒部ですが、屈折式と反射式に分けられます。
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。
屈折式
屈折式は、レンズによる光の屈折を利用して像を結び、その結んだ像を接眼レンズ(今はアイピースという)で拡大してみる望遠鏡です。この望遠鏡の致命的な欠点は、色収差が出るということです。色収差とは、光の屈折は波長(易しく言い換えれば色)により異なるため、対象が青じみて見える現象のことです。そのため、対物レンズは2〜3枚の屈折率の異なる凸レンズと凹レンズを組み合わせて配置し、できるだけ色収差が出ないようにしています。(これを色消しレンズといいます。間違っても天体の色が消えるわけではない。)
そんでもって、屈折式は大きく分けてアクロマートとアポクロマートがあるのです。
アクロマートとは、前述のとおり2〜3枚の屈折率の異なる凸レンズと凹レンズを組み合わせて配置し、赤と青の光について焦点を合わせできるだけ色収差が出ないようにした望遠鏡です。しかし完全に補正されているわけではないので、若干青じみた色が残ります。ただしF値(焦点距離(mm)を口径(mm)で除した値)の高い望遠鏡では気にならないでしょう。
一方、アポクロマートは原理は同じですが、さらに紫の色も収差が出ないようにしています。そのため性能は格段によくなりますが、当然のことながら設計などは難しくなり、お値段も格段に高くなります。
最近は、フローライトやEDレンズを使ったアポクロマートが主流でしょうか?私の屈折機は、フローライトを使ったビクセンの102mm望遠鏡です。(現在は製造中止)確かに見え味は、格別です。出張観望会で現在は使用しています。
ちなみにアクロマートも、ガイド鏡として活躍しています。ガイド鏡には申し分ありません。
反射式
反射式は、その名のとおり星からの光を望遠鏡のお尻(こういう言い方がいいかどうかは分からない)にある反射鏡で反射させてその光を小さな鏡で再度反射させて鏡筒外へ送り出してそこで像を結ばせて拡大してみる方法です。ややこしい説明ですね。
このうち、望遠鏡のお尻についている鏡(凹面鏡)を主鏡、小さな鏡のことを副鏡といいます。
ちなみに現在学術研究などに使われている大型望遠鏡は色の収差などがないためほぼ反射式望遠鏡です。
反射式は、副鏡の役割によって何種類かの望遠鏡に分けられます。
ニュートン式反射望遠鏡
その名のとおり、ニュートンが発明した反射望遠鏡です。鏡筒の前方に45度に傾けた斜鏡といわれる副鏡を設置して主鏡に集まった星の光を直角にまげて筒外に導いて結像させる方式の望遠鏡です。形としては横から覗くことになります。
Stardome_MOMOの主力は20cmニュートン式反射望遠鏡です。
反射望遠鏡は、屈折式の欠点である色収差がなく、またニュートン式はもっともシャープに見ることができます。しかしながら視野の端の星はコマ収差のために彗星のように尾を引くように見えます。特にF値の低いニュートン式は顕著で、ちょっといただけません。そのため、コマコレクターなどコマ収差を取り除くレンズをつけて見るような機構になっています。
私の望遠鏡もF4とF値が低いので、コマコレクターをつけています。
Stardome_MOMOのニュートン式反射望遠鏡
左が、前景・中央が接眼部とファインダー
右が主鏡と主鏡に映っている副鏡
カセグレン式反射望遠鏡
カセグレン式は、比較的大口径の望遠鏡によく用いられる方式です。副鏡に小さな凸面鏡を用いており、主鏡で反射した光は副鏡でさらに反射して主鏡の方に戻り、主鏡中央にあけている穴から外に出てそこで結像します。
特徴は、焦点距離が長い望遠鏡でも、光の経路が折り返し折り返しになるので鏡筒の長さを非常に短くできるということです。欠点としては、ピントあわせが非常に難しいということでしょうか。
現在はこの進化型としてシュミットカセグレン式望遠鏡が出ています。
これは主鏡を研磨しやすい形にする代わりに、それによって生じる球面収差を、先端に取り付けた非球面の補正板で補正した望遠鏡です。またピント合わせは接眼部ではなく主鏡を動かして合わせる方法が一般的みたいです。
私はカセグレンの望遠鏡は持っていませんが、よく言われるのは、像はピント合わせが難しくちょっとでもずれるとボケる事、またそんなにシャープではないということです。
以下の写真は、口径20cmのシュミットカセグレン式望遠鏡の例です。
カタディオップトリック式反射望遠鏡
なんか難しい名前が出てきました。この望遠鏡は、屈折望遠鏡と反射望遠鏡が結婚して生まれた子供です。・・・そんなわけないです。屈折式と反射式の長所を取り入れて作られた望遠鏡です。私は、ビクセンのVC200Lを持っています。眼視での像は、お世辞にもいいとは言えれませんでしたが、焦点距離が長い分二重星の分離は容易でした。それと確かに、ピント合わせは難しいと思われます。その点を留意してください。
Stardome_MOMOのVC200L
左が本体写真・中央が接眼部とファインダー
右が望遠鏡内部(バッフルが見える)
望遠鏡の架台
望遠鏡の架台は、大きく分けて赤道儀式と経緯台式の2種類があります。
赤道儀式は、現在個人アマチュアに普及しているドイツ式赤道儀やフォーク式、国立天文台岡山天体物理観測所に置かれているイギリス式などがあります。一方、経緯台式はドブソニアン望遠鏡や比較的安価なアマチュア用の望遠鏡、またハワイにあるすばる望遠鏡は経緯台式です。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
赤道儀式
赤道儀式は、2つの軸があり、一方を北極星(正確には天の北極)に合わせることで正確に星の日周運動を追いかける動きをする架台を指します。北極星を指す軸を極軸(赤径軸)といい、それに直交する軸を赤緯軸といいます。目標の天体に望遠鏡を向けたときに、極軸は天体の動きに合わせて回っていますが、通常赤緯軸は止まっています。
私が持っているのはドイツ式赤道儀と呼ばれるもので、赤緯軸の上に望遠鏡本体、その反対側にバランス用の錘をつけたポピュラーなものです。
ただしこの方式には、天体が子午線(真北から真南に天頂を通っていく線)を通過するときに望遠鏡が三脚などにぶつからない様、180度回転させなければならないという欠点があります。
また、この望遠鏡は正確に極軸を北極星(南半球なら天の南極)に向けないとぜんぜん意味がありません。
たいていのドイツ式赤道儀には、極軸望遠鏡という北極星などに極軸を合わせることが出来る(望遠鏡の中に北極星を入れる範囲が示された版があり、それに入れるとおのずと極軸に合うようになっている)小さな望遠鏡が入っています。これを用いればたやすく極軸をあわせることが可能です。
極軸望遠鏡の例(EM200)
フォーク式
フォーク式は、赤径軸がU型の形をした架台です。U型の間に望遠鏡を挟みこんでいます。そのため鏡筒の長い屈折望遠鏡や反射望遠鏡では、Uの字の腕を長くしなければならないため、(そうしないと望遠鏡が極軸をまたがって動くことが出来ない)そうなると強度や安定性が著しく損なわれるため使いづらいものでした。
しかしながら鏡筒の短いシュミットカセグレンの登場で一気に普及した架台です。
岡山県の美星天文台101センチ望遠鏡も、フォーク式の架台を用いています。(一番右の写真参照)
この架台は、バランス用の錘が不要なこと、また天体を子午線に関係なくいつでも追尾できることから非常に有用な架台であると思います。(ふっくんも次はフォーク式にしようかなと考えています。)
以下の写真は、フォーク式赤道儀の一例です。
経緯台式
経緯台式は、水平方向と高度方向に自由に望遠鏡を動かして天体を追いかける方式です。望遠鏡に慣れていない人、直感で捜したい人にはぶち向きの望遠鏡架台です。もちろんどこにどの方向で置いても関係ありません。これは初心者にとって大切なことです。下の写真は、経緯台式望遠鏡の例です。
経緯台式は、水平方向と高度方向の2つのねじで星を追いかける仕組みになっています。すなわち赤道儀と違って、両方のねじを微調整しないと天体をうまく追いかけてくれません。逆に極軸を定めなくてもよいので、どの方向に望遠鏡を置いても天体を追いかけることが出来るというメリットはあります。ですから初心者の観望会にはなくてはならない望遠鏡架台だと思います。
赤道儀式は、自動での追尾や天体写真に絶大な威力を発揮しますが、極軸が大幅にずれているとこれほど使いにくい架台はない・・・って状態になります。ためしに極軸を東なり西に向けて望遠鏡を動かしてみると、もう頭が混乱して分けわかんなくなりますよ。
経緯台式の代表的な望遠鏡は、ドブソニアンでしょう。たまに観望会で見かける大砲のような望遠鏡です。
なお、シュミットカセグレン望遠鏡の例、フォーク式赤道儀、経緯台式赤道儀、ドブソニアン望遠鏡は美星天文台の協力で撮影させていただきました。厚く御礼申し上げます。
でも、星の日周運動を追いかけるためには水平、高度共に動かさないといけないので結構大変です。そんなわけで、長時間の写真撮影には向いていません。でも、高度ダイヤル・水平ダイヤルを巧みに操り、写真を撮っている人も広い世の中ですからいらっしゃるかもしれません。ぜひお会いしたいと思っています。
どっちの架台・望遠鏡がお得?
よく言われていることですが、手軽に星を見るのなら経緯台、天体写真を撮ったり、じっくり星を見たいのなら赤道儀です。しかし赤道儀は使い慣れるまでが少々時間がかかります。慣れれば、星の動きに合わせて架台が動くので使いやすいと思います。
これはパソコン制御の望遠鏡でも同じことで、北極星がどの星か分からないうちは買ってもお蔵入になる可能性が高いですね。
まずはお手軽な経緯台式で、星空に親しむことから始めたほうがいいような気がします。
でも、これはどっちを購入するにしろ言える事ですが、架台はしっかりした物、望遠鏡の大きさにあったものを購入することをお勧めします。最近の製品は、あまりに粗雑なものは影を潜めたとは思いますが…架台がフラフラしている状態で望遠鏡で星を見るのは非常にイライラします。架台の強度を見るには望遠鏡を載せて上から押さえたとき、ガタつかないか確かめてください。これでガタつくようではまず駄目です。
望遠鏡本体についてですが、私としては最初は屈折式をお勧めします。
屈折式は扱いやすく、像も比較的綺麗です。反射望遠鏡は、筒の中で空気が揺らぐのでどうしても像がぼやけやすくなります。また光軸が狂いやすく、一度狂うと修正しないと益々見え味が悪くなります。
ただ、屈折式は同じ口径の反射式に比較して値段が高いことは否定できません。反射式の10cmなら安いもので数万円出せば手に入りますが、屈折の10cmなんて…反射式と比べたらかなり高いです。ましてやアポクロマートにしようものなら…
そんなわけで、最初はアクロマートの5〜8cmをお勧めします。
アクロマートといいながらも最近はそれなりに見え味が鋭くなってきています。何かの機会に見てみてから購入するのも悪くないでしょう。
慣れてきたら反射式を買ってみてください。5cmと20cmの像の違いは歴然です。大口径の集光力はすばらしいと感じますよ。
天体望遠鏡の大きさと見える天体のおおよその一覧
私が持っている望遠鏡は口径20センチが最大です。よく言われるのが、この望遠鏡は何倍で見れるのですか?ということです。私の望遠鏡だって見ようと思えば500倍でも1000倍でも見ることは可能ですが、それで見たところで天体は綺麗には見られません。
実は望遠鏡で大切なのは(双眼鏡も基本はそうですが)口径とその鏡・レンズの精度なのです。ハワイにあるすばる望遠鏡は鏡の大きさが8.2mもあります。国内最大の望遠鏡が2mです。つまりそれだけ光を集められるということです。光を集められるということは解像力が高い、より細かいところまで見られるということです。すなわち同じ映像を従来のテレビとハイビジョンで見ているくらいの差ができるのです。それとその光を1点に集めることができる精度も重要です。ラフな話ですね。
小さい口径の望遠鏡を無理に高倍率で見ても光の量がそれに追いつかずに暗い像としてしか見られません。新聞の写真を虫眼鏡で拡大したようなものです。
だから、よくホームセンターやデパートで売っている口径5センチ程度の望遠鏡で500倍などという宣伝で売っているものは殆ど何も見えない(見えないわけではなく、像として見えない)と考えて差し支えありません。口径5センチならせいぜい50倍がいいところです。
口径 | 8cm | 10cm | 15cm | 20cm |
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月 | 地形の荒い起伏 | 細部が一通り分かる | 一昔前の天体写真 のように見える |
シーイングがよければ 月面旅行気分 |
水星 | 位置のみ | 三日月のように見える | 膨らんだ形もわかる | 満ち欠けが観測できる |
金星 | 満ち欠けが観測できる | フィルターをつければ 雲の様子もわかる |
同左 | 同左 |
火星(接近時) | 大雑把な模様と極冠 | 同左 | かなり細部もわかる | 大接近のときはかなりの 地形状態がわかる |
木星 | 縞模様 | 同左(大赤班も見える) | 縞模様の細部も わかるようになる |
同左 |
土星 | 輪と衛星タイタン | カッシーニの隙間がわかる | カッシーニの隙間が はっきり確認できる |
土星本体の模様が 見えることもある |
天王星 | 位置のみ確認できる | 円盤型に見える | 同左 | 同左 |
海王星 | 位置のみ確認できる | 同左 | 青い円盤に見える | 同左 |
二重星 | 100個以上 | 数百以上 | 1000以上 | 同左 |
星団 | 球状星団が見える | 同左 | 球状星団が星に 分解して見える |
同左 |
星雲 | 200個以上 | 同左 | 星雲の薄い模様が わかる |
細かい模様がわかる |