indexに戻ります!

初めて星を見る人に  空を見上げてみよう!

星空環境と光害(ひかりがい)

東アジアの光害の様子です。なぜか北朝鮮は明かりが見えません。きっと素晴らしい夜空が見られるでしょうね、私は行きたくないですが(笑)

光害という言葉、英語ではLight Pollutionと呼びます。そのままです。
私の住んでいる岡山県には、県西部の国立天文台岡山天体物理観測所や美星天文台、美星スペースガードセンターなど大型の望遠鏡施設を備えた建物が点在しています。そして数年後には、国内最大となるハニカム鏡を備えた天文台の建設が予定されています。
天体観測に余計なものは何かというと、余計な光です。
何も天体観測に限ったことではありません。動植物の生態や、果ては人間の生態にも影響します。余計な光を出すということは余計な電力を用いることから、言い換えれば余計なエネルギーを消費しているこれはいけませんね!ということになります。
じゃ、照明など全て無くしてしまったらどうか・・・などとはいえません。必要な光はいるのです、この生活を維持するためには。

すなわち、光害と言うのは余計な(必要外の)光による人間生活や自然環境への害を言っているのです。

光が必要な場面を想像してみて下さい。
防犯のための照明、広告のための照明、看板を照らす照明、屋外運動での照明、信号灯火など安全に関する照明などがありますね。でも、それらのどれが空を照らす必要があるのでしょうか?どれが野山を照らす必要があるのでしょうか?空港にあるサーチライトは飛行機を誘導しないといけませんけどね。ここでは、光害と星空環境について考えてみたいと思います。
なお、本文章は「光害対策ガイドライン 平成10年3月 環境省」ならびに「光害防止制度に係るガイドブック 平成13年9月 環境省」をベースに作成されています。なお、光害対策ガイドラインは平成18年12月に月に改定されています。一部それに即して文章を修正しています。

光害とは?

 光害とは「人工の光が作り出す様々な害のすべて」(CIE 国際照明委員会の定義より)、あるいは「良好な光環境の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、またはそれによる悪影響と定義(光害対策ガイドライン)できます。
しかし、照明は現代社会にとって欠くことのできないものです。この定義を誤解のないようにもうひとつ付け加えるのなら、「本来の役割を果たしていない」人工の光が作り出す様々な害の全てとも言えます。ただ、そうは言っても夜に光り輝く広告・・・よく街にありますね、そのようなものは本来の「広告の」役割を果たしていると考える人もいるかもしれません。夜空を照らす(パチンコ屋や遊技場に多い)サーチライト・・・これも本来の役割がそのような「人目を引くこと」であれば、本来の役割とも言えるのかもしれませんね。
 ただ、考えてみてください。本来の「照明」の社会的目的を・・・
照明の社会的目的は、夜間(屋外において)人間が、安全で効率よく活動することを助ける、あるいは(昼間も含めて)各種社会システムの円滑な維持、効率的な経済活動を助けることだと思います。
この場合、先の過剰な広告やサーチライトはその意義を果たしているのでしょうか?夜間、いかほどの人が光り輝く広告を見るのか、そしてその光の影響で、近隣に住む住人の窓が明るく照らされて不眠症にならないのか。
昨今は加えて地球温暖化対策ということで、無駄なエネルギーの消費を止めましょうという動きがあります。地球温暖化の原因が二酸化炭素か?という議論はここではしませんが、でも無駄な電気の消費は化石燃料の過剰消費にも繋がるので、抑える必要はあるでしょう。
 光害は、いわゆる公害の定義には入りません。そして我々現代人は夜は照明で明るいものという認識が心に染み付いています。その中で光害を認識することは非常に難しく、また多くの一般の人への啓発活動はさらに難しいと思います。しかしながら、光害は私のように天体観測を趣味とする人ばかりでなく、実は一般人にも、植物にも、動物にも、そして安全対策にも害があるということを訴えていきたいと思います


光害を理解するための言葉勉強してね!

光害についての模式図を示しました。

光害の用語解説

 ここで、照明装置(光源)から照射される光で、その目的とする「照明領域」対象外に照らす光を「漏れ光」と呼びます。「障害光」はそのうち、人間や動植物の活動に悪影響(例えば苛立ち感、不快感、注意力の散漫、視認性の低下などや、植物の生態不全など)を与えるものです。
また光源からの光の量を「ランプ光束」といい、そのうち光源を有する照明器具から外に照射される光を「器具光束」と言います。そして「ランプ光束」のうち、水平より上に向かうものを「上方光束」そしてその比率を「上光光束比」、同様に水平より下に向かうものを「下方光束」そしてその比率を「下方光束比」と言います。
また「照明率」は有効利用光束/総ランプ光束=(照明面積×平均照度)/総ランプ光束で表し、照明システムの効率を決定付けるものです。
光害は、このうち「漏れ光」により様々な障害を生み出すものを指しているのです。

光害による環境影響

光害による環境影響を簡単に下の図で見てみましょう。決してその影響は天体観測だけではないのです。

屋外照明と光害の相関図です。人間活動に限らず、多くの生命に光害は深刻な影響を与えます。
光害防止制度に係わるガイドブックより

@植物への影響

 植物は皆さんご存知のように光合成で生きているものです。ですから夜間の過剰な光は少なからず影響を及ぼすと考えられています。もちろんその影響は個体により異なります。例えば、「ケヤキ」「イチョウ」はライトアップによる影響は少ないといわれている一方で、「プラタナス」「ユリノキ」「アオギリ」などは影響が大きいといわれています。夜間照明はその点を考慮して、光の波長や光度、季節や時間などを考える必要があります。
 また、農作物への影響ですが一番顕著なのはイネです。特に穂が出る1ヶ月前からの期間は重要で、過剰な夜間照明によって穂が出にくくなるなどの報告があります。他にもほうれん草などが影響が強いといわれています。農作物に影響がある場所で、無造作にたくさんの照明を作ることは、エネルギーの無駄遣いのみならず、補償問題にもなりかねないのです。実際にあったこともあるかもです!

光害による稲の影響
光害による農作物への影響
光害防止制度に係わるガイドブックより

まだまだ不明な部分は多いですが、主な植物への影響を示します。ただ、夜間照明が植物へ与える影響はまだまだ不明な部分が多いのが実情です。

光害の植物に対する影響!

A昆虫類・動物への影響

 地球上の生命体の中でずば抜けて仲間が多い種目は微生物と昆虫ではないでしょうか?昆虫類も実は光害の影響を受けやすいのです。昆虫には灯りを好む「蛾」のようなものもいれば、蛍のように灯りを嫌うものもいます。灯りが過剰にあれば、灯りを好むものはそこに集まりますし、嫌うものは当然離れてしまう・・・そのため場所により特定の昆虫が居なくなったり過剰に増えるという事態が生じます。またそれと同時にそれを餌とする小動物なども影響を受けます。その点を考慮した照明環境が重要になると思います。
うちの実家周辺には、水田、山林、小さい小川やため池が多くあります。このような場所では、季節ごとの昆虫の飛来が考えられますが、前述のように照明の設置状態によっては、特定の種が来なくなるということも考えられるのです。
対策として挙げられることは、昆虫生態に影響の少ない波長の照明を用いるとか、昆虫の生息方向への照明を出来るだけ軽減するなどの対策が考えられるでしょう。
昆虫に影響を与えるということは、それを餌とする小動物や、さらにそれを餌とする動物への影響も避けられません。また夜行性の狸など、それらの活動を夜間の過剰照明は妨げる弊害もあります。狸などは急に明るい光に照らされると動けなくなるのでしょうか?そのため道路でよくひき殺されているのを私の近所ではよく見かけます。狐は昔は居ましたが、彼らはさらに山奥に引越したのか最近は見ていません。(ごくたまに裏山でごそごそ聞えますがあれは狸でしょうか?)
鳥類については、夜の鳥の代名詞とも言われるフクロウなどへの影響が懸念されます。
 ただ、総じて夜間照明が野生動物へ与える影響はまだまだ不明な部分が多いのが実情です。

B人間の諸活動への影響

 私達は人間様です。
そんなわけで、ここはちょっと詳しく書いてみたいまじめにいってみましょうところです。
人間の活動として光害が一番影響するのは「天体観測に関わる活動」かもしれません。都市部の光が大気中の水蒸気や塵で拡散されて夜空が明るくなる現象はいつでも見られます。天体観測所、天文台周辺の施設照明や一般照明が天体観測をはじめとする研究活動に影響を及ぼすと考えられる場合は事前の対策が必要です。手始めには出来るだけ水平より上に光が出ない対策が良いかもしれません。
特に天体観測は夜空のわずかな光を追うことが多いので、例え車のヘッドライトにしても大きな影響を与えることになるのです。

 また一般の居住者や歩行者に対しても光害は悪影響を及ぼします。道路や街路の屋外照明が、住居内へ強く差し込むことによる安眠妨害、不適切な照明の選定・設置により逆に歩道や車道に必要な明るさが得られなかったり、グレアという不快な明るさにより安全を脅かすことも考えられます。道の街灯は明るければそれでいいというわけではありません。明るすぎることで、本来見えなければならない場所が見づらくなるという経験をもたれている方もいるのではないでしょうか?
 さらに余計な照明や明かりは、交通機関(車・船舶・航空機)の運行にも支障をきたします。

光害による安眠妨害
光害防止制度に係わるガイドブックより

光害の正しい理解

ちょと、話がそれますがご勘弁ください。
 今、地球温暖化が問題になっています。二酸化炭素がえらいパッシングを受けています。私の地元で聞いた話ですが、ある小学校にこのようなポスターが貼ってあったそうです。
「二酸化炭素は人類の敵だ!」
 思わず、笑ってこれがおかしいと思わない人がおかしいしまいました。これを書いた人は、どういうつもりでこんな馬鹿げたことを書いたのでしょうか?もしこれを大真面目で書いたとしたのであれば、・・・いや止めましょう。もしそれを書いた人が運良くこのHPを見たのであれば、しっかり「本当の環境問題」を勉強することを望みます世の中には宗教に近い環境問題も多いです。ただ、巷には「環境問題のうそ」とか「環境問題のうそのうそ」とか様々な本が出ています。私も「環境問題のうそのうその・・・そのうそ」なんて本を書いたら売れますかね〜何か変ですよね

 ただ、かわいそうなのはこれを見た小学生がそれを真に受けて信じることです。小学生は無垢ですからね〜
はっきり言います。二酸化炭素が地球上から全くなくなった場合、人類はこの地球に住むことは出来ません。もちろん多くの生物も同じです。地球に二酸化炭素はなくてはならないのです。
 現在問題になっているのは過剰な二酸化炭素なのです。もっとも、その過剰な二酸化炭素を出しているのは人類ですから、話のストーリーとして人類は人類の敵だ〜になるのでしょうか?笑ってしまいます
さて、本題に戻りましょう。
 光害も同じことなのです。今は誰も振り向かない光害ですが、将来何かのきっかけで振り向かれた場合、正しい理解が必要なのです。光害とは先にも書きましたが、言い換えれば「照明本来の役割を果たさない照明対象範囲外の漏れ光が引き起こす障害」なのです。光・照明そのものの障害とは意味合いが違うのです。
 そして、光害の防止は全ての人にメリットがあるということを理解しないといけません。それは、「夜間生活の安全性、安心感」「快適な夜間生活空間」「動植物との共生」そしてなんと言っても「省エネルギーの実現」でしょう。また高齢化社会に向けては「光源の輝度を低く抑えて、グレアをなくすこと」が重要であると考えます。高齢者は異常にまぶしい光に過敏に反応するためです。

夜空の明るさ問題について考えてみよう

 本来、真っ暗な夜の闇でも明るさというものは持っています。これが(本来の自然光による)「夜空の明るさ」です。しかしながら何らかの人工光により、夜空本来の明るさより明るさが相対的に大きくなる問題を「夜空の明るさ」問題と言っています。
ではどうしてこのようなことが起きるのかというと・・・夜間の人工光が大気中で光の進行方向に関わらず、あらゆる方向に錯乱されることにより発生するといわれています。また、光が錯乱する方向にエアロゾルや水蒸気など微細な粒子が存在する場合は、空気のみの場合に比べて相対的に錯乱は大きくなりますし、また錯乱される地上光の強度、方向によっても大きく左右されます。
 話は戻りますが、夜空の明るさについて先ほど夜空自体も明るさを持っていると書きました。これを「夜天光」と呼び、大きく「黄道光」「大気光」「星野光」に分けられます。
黄道光とは、太陽系の中を移動する微粒子が、太陽の光に反射して光るものです。ですから天球上で太陽の動く道(黄道)に沿って光るので、このような名前がついています。したがって、太陽の通り道以外は殆ど影響がありません。自然光に対して占める割合は42%
大気光とは地球の上層大気が、太陽からの紫外線等により刺激されて光る光をさします。自然光に対して占める割合は17%
最後に「星野光」ですがその名のとおり夜空に見える星や星雲の集積した光です。自然光に対して占める割合は41%
以上、3種類の光により最高の夜空の明るさは1平方秒あたり約22.1等級と言われています。
Stardome_MOMO(岡山市北西部の郊外)で測定される夜空の明るさは、1平方秒あたり最高によい日で約20.5等級でしょうか。この状態ですと5等星くらいは視認できます。岡山市内ですと晴れた日でも約16〜17等級です。こうなると2等星がせいぜいですね。中心部に行けばさらに悪くなります。
 このように夜空の明るさ問題とは、夜空の明るさが自然光に対して「相対的に」大きい状況が「地域的に」発生しているということです。
そうなるとそれを抑制する働きかけをしないといけませんが、なにぶんどのような観測条件を想定して、観察結果を議論すべきかは非常に知見が少ないのが実情です。これについては名古屋市などが精力的に取り組みを行い、他の市町村でも行っているところもあります。今後は、地域環境基本計画、地球温暖化防止計画と併せて行われていくことが望ましいと思います。
 また一般市民が参加できる夜空の明るさ問題としては、環境省が主体となって行っている「全国星空継続観察」というものがあります。これは簡単なモニタリング調査(肉眼、双眼鏡、一眼レフカメラ)で夜空の星がどのくらい見えるかを確認するものです。決して難しいものではありませんし、特別な道具がなくても肉眼でも観察できるので、星空環境の学習に合わせて行ってみたらいかがでしょうか?

 以前ある雑誌にこのようなことが書かれていました。
巨大望遠鏡の建設や、宇宙望遠鏡の打ち上げで人類はついに宇宙の果てまでを見通そうとしている。しかし実際に私たちの見る夜空は、満足に星さえも見ることは出来ない。まして宇宙の果てなど、想像もつかない夜空である。
望遠鏡で見る天体は本当に美しく素晴らしいものだ。ただ、望遠鏡はなくとも星がたくさん見える・・・そんな満天の星空はもっともっと美しい。
みなさんは、本当の夜空の下で星を見る喜びを知ってもらいたい。

地域特性に応じた照明環境について

地域特性に応じた照明環境として、ガイドラインでは4つの類型を設定しています。この点については、都市計画を専門とする人や地方自治体の担当部署の人たちには配慮していただきたい事項です。

また地域の目的にあった「光環境の創造」というものが今後大切になってくるのではないでしょうか?何度も言いますが、光害防止はやたらめったら灯りをなくせという意味合いの物ではありません。無駄なエネルギーを減らして、メリハリのついた光環境を創造することが大切なのです。この文章を書いているのは12月です。クリスマスの季節です。私の通勤途中にも、様々な家にイルミネーションが飾っています。非常に綺麗です。でも、周りの灯りが必要以上に明るかったら、この美しさが際立つでしょうか?
他にも夏の花火・・・嫁さんのふるさとの新潟県長岡市には8月2日〜3日に盛大な花火大会が行われます。地域の人が楽しみにしている花火大会のとき、街明かりで夜空がぼんやり明るいところに大輪の花火が咲いて、その美しさが楽しめるでしょうか?やはり背景は真っ暗な空のほうがいいはずです。こういう地域の祭りのときは、防犯灯や街路灯など生活に必要な灯りのみをつけて、他の灯りは自粛するという取り組みも必要ではないかと思います。
では、今後光害を考えるに当たっての基本的な用語説明です。解説図とあわせてご覧ください。

光害対策に取り組んでみよう!

ただ、実際にどう取り組むべきなのか?
これは、一人だけで動けるものでもないと思いますがヒントになることを添えて、光害対策の紹介としたいと思います。
なお、光害対策ガイドラインなど環境省が出している文書もありますので、あわせて参考にしてください。

最後に・・・

 さて、駆け足で光害というものを見てきました。他にも色々と紹介したいことはあるのですが、それは追って紹介の機会を設けたいと思います。おそらく光害は人間生活にとって差し迫った問題ではないので、環境問題を考えるにあたり振り向かれることは少ないと思います。私のように天文学を趣味とする人にしか差し迫った感はないでしょうね。しかしながら、今後地域環境を考えていく際には、良好な照明というのは省エネや無駄なエネルギー消費の観点からぜひとも取り組まないといけないことだと思います。
 話は変わりますが、私は建設部門で技術士の資格を持っています。専門分野は建設環境で「建設事業における生活環境の保全」を専攻してとりました。技術士といってもピンと来ない人が多いと思いますが、技術分野では最高クラスの資格です。本当の専門は、土壌汚染調査と対策、水環境対策です。しかしながら天文を本格的にやり始めたときに、光害についても考えていきたいと思うようになりました。ただ、あまり生かすことなく現在に至っているのは事実です。光害と密接に関連する都市計画は建設事業です。本業もありますし、私もまだまだ勉強中ですが、星が見える夜空を目指して、私と一緒に「光害」を考えて行きませんか!
 興味のある方は、連絡お待ちしています。ふっくんと光害を考えようへメールする。(☆は@に変更してください)

初めて星を見る人に
星を見る日と場所 星空の目印 肉眼で星空を見る 双眼鏡で星空を見る 望遠鏡で星空を見る 便利な小道具
毎月の星空 月を見る 惑星を見る 星座を探す 星雲・星団を見る (番外編)太陽を見る 星空環境と光害
ふっくんの星空散歩