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天の川の正体は?

 天の川・・・皆さんは分かりますか?ふっくんは地元の美星天文台でボランティアをすることもありますが、天の川を見たことがない、見る機会がないという人は大勢おられます。なかなか街中では見ることができないのかもしれませんね。8月くらいの月のない夜に、あれが天の川ですと天頂を示すと一同に歓声が上がりますね。
 天の川は太陽系を含む私たちの銀河系を言っています。また天の川は初秋の季語にも用いられ、松尾芭蕉などは「荒海や佐渡に横たふ天の川」などと奥の細道で詠んでいます。昔は街明かりが少なく、天の川も綺麗に見えたのかもしれませんね。


天の川って川なの?

 天空を横切るように白い帯が流れている天の川は、一体なんでしょうか。古代日本人は、夜空に輝く光の帯を天上の「川」として認識してきました。「古事記」の中にも「天安川」として天の川の記述があり、奈良時代の万葉集にも天の川を題材にしたたくさんの歌が詠まれています。また中国から伝えられた牽牛・織姫伝説は、天の川を「川」と認識していた日本人にはすんなりと受け入れられ、七夕伝説として広く広まりました。
 一方、西洋ではMilky Wayのごとく乳の道と称したり、いて座のティーカップから沸き立つ湯気と称したり、ギリシャの「銀色の道」、ペルシャの「わらの道」というように多くは「道」と考えられていたようです。
 では、双眼鏡で天の川を見てみましょう。そこには無数の小さな星があることがわかります。私たちが古来から「川」と思っていたものは、実は星が川のように連なっている「星の大集団」だったのです。
では、双眼鏡で天の川の中を探検して見ましょう。夏の天の川の南側、いて座の方向をみると、星の集団に加えて、いくつか白いにじんだ雲のような星雲が見えてくるかもしれません。他にも星が群がっている星団が見えてくるかもしれません。時には全く星が見えなくなるエリアも見えてくるかもしれません。これら全てが、私たち太陽系の属する銀河の内からの姿なのです。
 では、その天の川をもう少し詳しく見ていくことにしましょう。

天の川を調べた人々

 天の川の全体像を捉えようと最初に挑戦した天文学者はウィリアム・ハーシェルでした。18世紀のことです。彼は、全ての星の明るさは一定で、限られた範囲にあり、その中での密度分布は一定であり、その端まで観測できるという仮定の元、全天の数千箇所に望遠鏡を向けて星の数を数えました。使用した望遠鏡の視野は5分角といわれており、非常に根気の要る作業だったと考えられます。そしてこの結果を1784年に発表しました。

その発表内容は要約すると、「天の川のうち星(恒星)が存在する範囲は、銀河方面に平たく伸びた円盤状で、厚さは直径の1/5、太陽はそのほぼ中央に位置している」というものでした。銀河そのものの大きさについては、恒星の視差が計測できない時代でしたが、この円盤の大きさはおよそ6400光年であるとハーシェルは記しています。下の図がハーシェルの発表した天の川銀河です。

 現在、正しいと思われている大きさから見れば、非常に小さい値ですが、これは、ハーシェルの観測で大きな誤解は、銀河を端まで見通せるという仮定でした。私たちが普段見る可視光では、星間物質の影響で遠くまで見通すことはできなかったのです。しかし我々の住んでいる銀河は扁平な円盤状であることを突き止めた功績は偉大と考えるべきでしょう。。

その後、恒星の距離測定ができるようになってからさらに精密に銀河の大きさな形を調べる試みは行われました。1922年にオランダのカプタインは自らの著書で銀河系の大きさを、直径約5万光年、厚さ1万光年の回転楕円体(レンズ状銀河)として太陽は中心から2000光年の位置にあるとしました。
 またシャプレイは、天球上にある球状星団の分布がいて座方向に集中していることに注目していました。また球状星団までの距離を測ると、カプタインが想定した銀河の大きさよりはるかに遠くに位置していたのです。これは何を意味しているか?最終的に、シャプレイは「球状星団は我々の銀河系を取り囲むように分布する天体であり、銀河系の周りにほぼ一様に分布している」という考えにたどり着きました。そうなると、いて座方向にたくさん球状星団があるということは、私たちは銀河系の端のほうから見ているということになります。
 最終的に、銀河系の形は球状星団を含めた大きさでおよそ30万光年の球状、そして銀河系はその中に扁平状で存在し、太陽は中心から5万光年離れた位置にあるというものでした。まぁ、こうなるとカプタインの銀河はどうなのだということで、強い反対を受けたようです。しかし次第にシャプレイの説が正しいことが実証されていくようになりました。ただし、シャプレイも星間物質による光の減衰を考慮していないため、銀河の大きさを大きく見積もりすぎてしまいます。

 やがて1950年代以降は電波による観測、さらに1980年代になると人工衛星による赤外線やX線による観測も行われて、次第に銀河系の様相が明らかになってきました。星間物質による光の減衰も正確に見積もられるようになり、銀河の姿がおおよそ分かるようになったのは、ごく最近のことです。

天の川(銀河系)はどんな形をしているの?

 現在、分かっている天の川銀河系の形と大きさについてですが、渦巻銀河(近年の観測では、棒渦巻銀河)で、星からなる円盤部、周囲を取り囲む扁平楕円体部、暗黒ハロー部に分けられます。
 円盤部には私たちの太陽系をはじめとするたくさんの恒星、散開星団や数多くの星雲、星間物質が渦巻状に分布しており、高速で回転しています。電波観測により、銀河系にはいて腕、ペルセウス腕、オリオン腕などいくつかの腕(スパイラル・アーム)がでており、太陽系はオリオン腕に位置しています。
 扁平楕円体部分には、たくさんの球状星団が分布しています。
 その外側の暗黒ハロー部は、どこまで広がっているのか、どのような物質で出来ているのか不明であるが、おそらく30万光年以上の範囲に、銀河系の10倍程度の質量が存在すると考えられています。
現在考えられている天の川銀河の具体的な大きさは以下のとおりです。
    円盤部の直径          10万光年
    円盤部の最大厚さ       1.5万光年
    扁平楕円体部の大きさ     15万光年
    太陽の位置           銀河系中心より2.6〜2.8万光年
    太陽位置の円盤の厚さ    5000光年
    太陽付近の回転速度     220km/sec
    円盤部分の質量        太陽のおよそ2000億倍

最後に・・・

 私たちは図鑑や望遠鏡、あるいは写真でたくさんの銀河をみることができますが、唯一私たちの銀河系を外から見ることはできません。様々な観測データなどを使って精密に想定することはできるのですが、決して自分たちの「目」でみることは出来ません。
 でも、人間って不思議ですね。たとえ、見ることも行くこともできない世界でも、頭の中では過去未来を含めて見たり、行ったりできるのですから。それは未知なる世界を知りたいという、その心の欲求が原動力になっているのでしょうね。・・・そして、不可能といわれた銀河系の外からの姿もいつか見ることもできるようになるのかなぁ

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