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太陽系の不思議 星空の不思議 銀河宇宙の不思議 用語解説

月の不思議

 西の空に沈む三日月、そして東の空に昇る満月にハッとすることはありませんか?
 夜空に輝く星と共に、白銀色の輝きを放つ月・・・そして日々姿を変えるその姿に古代人は何を思ったのでしょうか?
 日本の古代神話(古事記)では月は「月読尊(ツクヨミノミコト)」と呼ばれ、太陽神である天照(アマテラス)の弟でスサノオの兄でもあります。しかしツクヨミノミコトは全くと言っていいほど神話の中に出てきません。唯一、姉の天照の怒りを買って離別されたシーン(可哀そう・・・)くらいかしら。でも、もしかしたら非常時に「裏方」として活躍していたのではないでしょうか。
 お月さまも太陽の前では目立ちませんが、夜の世界では煌々と輝きます。そして何より月があるからこそ、「私たち」は地球で生きることができるのです!
 ここでは、私たちにいちばん身近な天体である「月」についてみていきたいと思います。


月ってどんな天体?

 月は地球の衛星で、地球の直径約12,700kmに対して約3,480kmの大きさがあり、地球のおよそ1/3〜1/4の大きさです。
 また質量は、地球が約60兆tonに対して、その約1/80であり、密度も地球の5.52に対して3.34と小さめです。。
 衛星の大きさとしては、太陽系の中で5番目の大きさ(実は、準惑星の冥王星より月は大きい。で、最大の衛星はガニメデ、以下カリスト、タイタン、イオの順番)ですが、特筆すべきは、母惑星に対して、約1/4の大きさをもつ衛星は、他の惑星にはないということです。その大きさが地球を生命豊かな星にする大きな役割を担っているのです。(これについては後述しますね)
 
 月には大気が殆どありません。ですから、地球のように気温を保持したり遮ったりするものがないので、太陽の当たっているところは極端に温度が高く、逆に太陽の当たらない日陰や夜の部分は極端に温度が低くなります。ちなみに太陽は東の地平線から上り、約2週間かけて西の地平線に沈みます。そして日の当たる昼の部分の気温は約110度、太陽の当たらない夜の部分の温度は約−170度といわれており、その差はなんと280度もあります。酸素の沸点(液体酸素から気体の酸素になる温度)が−183度ですから、月の夜はそれくらい寒いということなんですね。
 また月は小さい分、重力が地球の約1/6しかありません。つまり体重60kgの人も、月に行けば10kgです。昔アポロ宇宙船の宇宙飛行士たちが、重たい宇宙服を着ていながら、月の表面を飛ぶように歩いていた映像記録を見た人もあるかもしれません。あれはめちゃくちゃ体力があるからじゃなくて、重力が小さくなって、体が軽くかんじるからだったんですね。。

月の誕生の話

 月はどうして生まれたか・・・様々な説があります。地球が生まれるときに、地球の引力が月を捉えて衛星にしてしまったとか、原始惑星系誕生の際に、地球と同じように形成されたとか・・・その中で、一番有力視されている誕生のストーリーが「ジャイアント-インパクト説」です。
 これは地球が形成され、原始地球ができたおよそ46億年前、地球に火星サイズの天体が衝突し、原始地球の一部と火星サイズの天体はバラバラになります。それがやがて地球の周りを土星の輪のように回りながら互いに衝突を繰り返し、ある程度の距離を保ったところに徐々に固まりながら月を作っていったという説です。そのときに地球に近い部分の衝突のかけらは、全部地球に落ちるかどこかに飛んでいったのでしょうね。。

ジャイアント-インパクトのイメージ (NASA提供)

月までの距離

 月までの距離は、およそ38万キロ・・・実際は36万キロ〜40万キロのなんですがね。36万キロ付近に来た月がスーパームーンです。ちなみに地平線近くの月が大きく見えるのは錯覚ですので・・・。 どのくらい遠いかというと、たとえば、地球が1mの球体だったとしたら、約30m彼方にバスケットボール程度の月が回っていることになります。
 もう少し具体的に見てみると…たとえば、時速550kmの飛行機で月に向かった場合、休まず飛び続けて約1カ月かかります。新幹線(時速300km)なら、2カ月弱、自動車なら時速60kmで走り続けて、9か月かかります。
 ちなみにアポロ11号は、4日程度で月まで行ったようです。


月の地形と内部構造

 さて、肉眼で見るとツルツルに見える月も、実際はデコボコです。双眼鏡、あるいは望遠鏡で見ると月の表面には無数のクレータがあることが分かります。 月のクレータは、遠い昔・・・月が出来て間もない頃に衝突した隕石の跡、あるいは火山の噴火の跡です。その地形が今までずっと残っているのは、月には大気も水も地殻変動もないため、地形が変形や削られることがなかったからと考えられています。
 月の地形でクレーターと同じく特徴的なものとして大きく広がる灰色の平原があります。これは月にある玄武岩が表面を覆ったものであるが、昔の天文学者はこれを海と思ったようです。 そして「静かの海」とか「晴れの海」という名前をつけて、それが現在まで用いられているようです。
 月の地形についてもっと知りたい方は、月を見るを参照ください。
 次に月の内部構造を見てみましょう。下の図は、最新の研究成果の基づいて作成された月の構造図です。


国立天文台提供

 月の地表面(地殻…月殻?)の下には、厚さ約1170kmの珪酸を主成分とする高粘性のマントルがあり、その下位に厚さ170km以上の低粘性・高密度のマントルが月の核を覆って分布しています。
 これは月の生成期にマントルの上部に作られたチタンに富んだ重い層が、マントルの深部に沈み込んで出来たと考えられています。ところで、これらの成果は、アポロ計画で観測された月の地震(月震)やレーザー観測による月の回転、さらには月の変形に伴うわずかな重力変化から、月の変形のしやすさ、内部の密度分布の情報を組み合わせて、日本の国立天文台が2015年暮れに発表したものです。
 さて、話は戻りまして…月の中心核についてですが、半径260kmの鉄とニッケルからなる固体内核と、その周囲を溶解している半径400km以下と考えられている流体金属の外核があります。ただ、その金属核の大きさは、直径のおよそ1割程度でしかなく、地球をはじめ、他の岩石惑星や衛星が半分前後の大きさであることと比べると非常に小さい異色の存在です。
 

南半球から見る月

 さて、旅行とかで南半球(オーストラリア、ニュージーランド)などに行かれた人もいるかもしれませんね。南半球に行くと、星空はどのように見えるのでしょうか?そして、月はどのように見えるのでしょうか?
 まず、南へ行けば行くほど、北極星を中心に回る北の星空は、どんどん北の地平線に沈んでしまいます。そして赤道付近をすぎると、北極星は見えなくなります。その時、日本では西の空に見える三日月は、ちょうどお皿のように空に見えることでしょう(北緯1度。。。シンガポール付近の三日月です)
 さらに南に下がりましょう。南緯33度。。。シドニーの星空です。私たちになじみのある星座たちはみんな北の空にひっくり返って見えています。ということは、三日月も同じようにひっくり返って、見えることになります。ちょうど見かけは、日の出前に東の空に見える月と同じような雰囲気で西の空に沈んでいくことになります。

もしも、月がなかったら

 母惑星(地球)に比較して、非常に大きな衛星…月。もしも月がなかったとしたら、地球はどのような星になっていたのでしょうか?いや、ある日突然月が消えたらと考えてみたら・・・何が起こるのでしょうか
 お月見ができなくなる。海の干満がなくなるので、潮干狩りができなくなる。宿題(月の観察)ができなくなる。日食が見られなくなる。釣りに行く時期が分からなくなる・・・なんて一般的には考えられるかと思います。平和ですよね。でも、物理学から導き出された将来像を見ると、ゾッとしますよ♪
 結論から言うと、地球は人類の住むことができる星ではなくなってしまう可能性が高いということです。
 まず、月がなくなることで、現在の地球と大きく変わる点が2つあります。

 一つは、月の引力がなくなるため、地球の自転スピードが上がり、1日が6時間〜8時間くらいになってしまうということです。それ自体は大したことではないかもしれませんが・・・そうなると地表面は、暴風雨にさらされ、月に引っ張られていた海面も引力が消えることで自由に動くようになり、浅瀬に大波が来ると考えられます。また潮の動きがなくなることで、潮の流れに身を任せていたプランクトンなどの移動が止まり、それを餌とする小動物、さらにそれを餌とする小魚、さらにさらにそれを餌とする魚類が絶滅し、生態系が崩れることも考えられます。
 地球の自転スピードは、海面が月に引っ張られているために抑えられています。それがなくなるのですから、地球はぐるぐると今の数倍のスピードで回るようになるでしょう。それに伴っての気象変化(しかも悪い方向の)や海の暴挙に人類は耐えれるでしょうか?

 もう一つは、地球の地軸角度が変わるということです。
 地球は太陽の公転面に対して、23.4度傾いて回っています。しかし地球の地軸は揺らいではいるのですが、月の引力で引き戻されているのです。ちなみに地球とほぼ同じ条件を持っているとされている火星の自転軸は衛星が非常に小さいため不安定で、時として数十度自転軸がぶれることもあるとか・・・。
 月がなくなってしまったら、軸のふらつきで南極・北極地方が暑くなったり、天王星のように横倒しになってしまうと、赤道付近が氷におおわれたり1年の半分が昼、半分が夜と大変なことになりそうです。もう気候変動なんて生易しいものではなく、生命の星には程遠い世界になりそうですね。また月がなくなることで、地球に落ちてくる巨大隕石の数も増えてくると言われています。

月はどんどん遠ざかっている

 毎日見ているお月さまですが、近年の研究から、月は確実に毎年3.8cm地球から遠ざかっていることが分かりました。逆を言えば、大昔は月と地球の距離は、今よりずっと近かったようです。
 月が遠ざかる原因は、地球の潮汐のためです。月や太陽の引力の影響で潮の干満が起きると、海の干満と併せて地球そのものもわずかに歪みます。この歪みが月を引っ張ることで、月がエネルギーを得て、地球から遠ざかるのです。逆にエネルギーを失った地球は、わずかに自転の速度を落とします。
 また他にも潮の干満により海と地球の海底の間に摩擦が起きて、ほんの少し地球の自転が遅くなります。そうなると同じように、月が結果として遠くに離れるようになるのです。
 いずれの現象も、地球と月を一つの運動系として考えた「角運動の保存則」で説明できます。
 さて、このまま月は永遠に離れていくのでしょうか?この現象は地球の自転速度が月の公転速度より早い場合に、地球の自転速度のエネルギーを月の公転速度のエネルギーに与えることで起きているので、地球の自転速度のエネルギー=月の公転速度のエネルギーとなった時点で収まると考えられています。しかしそれまでの時間は数十億年と言われており、おそらく太陽の膨張により月も地球もなくなるほうが早いと考えられます。
 したがって、月と地球が存在する限り、この現象が続くと考えるのであれば、永遠なのかもしれませんね。

最後に・・・知られざる月の裏側

 満月になると日本人はその月の模様を「餅つきをするウサギ」と言っておりました。この模様は、世界各国や地方により、大きな爪を持つカニとか、女性の横顔とか呼ばれていますが、皆さんは、月の模様がどうしていつも同じなのか・・・不思議に思ったことがありませんか?なぜ月の裏側(私たちから見えない面)は地球にいる私たちは見れないのでしょうか?
 その理由は簡単に言うと、月の公転周期(地球の周りを回る時間)と月の自転周期(月が一回りする時間)が27.32日で一致しているからです。ではなぜ月はそのような不思議な動きをするようになったのでしょうか?
 原因は、地球と月の間に働く引力(潮汐力)のためです。この力は強大で、硬い月も僅かながら地球方向に引き伸ばされます。また月内部の構造も「地球側に重心を寄せている形」になっています。ここで仮に月の自転周期が公転周期より早くなった場合、引き伸ばされた面がずれますが、戻す方向に力が働きます。逆に自転周期が公転周期より遅い場合、早くなる方向へ力が働きます。ちょうど安定して座っているダルマを傾けても必ず元に戻るのと同じ理屈です。ダルマを月、座っている平面を地球と考えてください。
 しかし実際は、地軸の影響などのより地球からは6割近い月面を見ることができるそうです。この現象は月の秤動と呼ばれています。

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