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太陽系の不思議 星空の不思議 銀河宇宙の不思議 用語解説

太陽の不思議

 私たちの母なる星、地球を46億年も見守り続け、豊かなエネルギーを与え続けてきた太陽。人間だけでなく、あらゆる生命が太陽からのエネルギーで生きています。そして地球上の気象現象も太陽によるところ大です。
 地球上に何億年と生命が脈々と受け継がれているということは、すべて太陽のおかげといってもいいかもしれません。力強く、慈悲深い星、それが太陽なのです。そんな太陽は、いったいどんな星なのでしょうか?
 ここでは、太陽の不思議に迫ってみたいと思います。


太陽ってどんな星?

 太陽は、巨大な高温のガス(気体)で出来た星です。表面温度は、約6000度といわれ、中心は約1500万度という、高温の星です。
 直径は約139万2000kmで、地球の109倍・・・体積は地球の約1,300,000倍(130万倍)と非常に大きいのですが、地球が岩石でできているのに対して、軽いガスで出来ているため、重さは2.0×10^30kgと地球の約330,000倍(33万倍)です。(それでも重いね!)
 ただしガスの星でも、ギュッと圧縮されているので、星の密度は1.41と水(1.00)よりは大きいのです。
 また、ガスで出来た星なので、地球と違い明瞭な地面(太陽面)はありません。強いて言えば、光球と呼ばれている面が太陽面と一般に言われているものです。
 では、太陽の構造を見てみましょう。

太陽の構造図
By Pbroks13 [CC BY-SA 3.0]

 @太陽中心核 A放射層 B対流層 C光球 D彩層 Eコロナ F黒点 G粒状斑 H紅炎(プロミネンス)

 太陽中心核は、太陽のエネルギーが生み出される場所で、約1500万度の高温と2.4×10^16Pa(約2.36×10^11気圧)の高圧の場所で核融合が行われ、太陽エネルギーの大半が生まれる場所です。
 放射層、対流層は中心核で生まれたエネルギーが運ばれるエリアで、約10万年以上かけて太陽エネルギーは表面に運ばれます。逆を言えば、今の太陽エネルギーは10万年以上前に太陽中心核で生まれたエネルギーなのです。
 光球はいわゆる太陽表面で、表面にはさしわたし1000km〜の粒状斑や黒点などが見られます。
 彩層は、光球を覆っているガスの層で、厚さは数千km〜1万km程度あります。ここでは時として紅炎(プロミネンス)が観察されることがあります。
 さらにその外側を100万度という非常に高温なコロナが覆っているのです。

太陽のエネルギー源

地球が太陽から受け取るエネルギー収支を示してみました。

地球のエネルギー収支
NASAによる資料

 太陽から、地球に到達する放射エネルギーを定義する量として太陽定数というものがあります。これは太陽と地球の距離が1AU (約1億5000万キロ)のとき地球大気の上端で単位時間に単位面積に垂直に入射するエネルギー量のことで、人工衛星の測定結果によると、約1.4kW/m2です。ただし、地表面には大気による吸収や雲などの反射により、全体の3割程度が失われ、実際には約1.0kW/m2のエネルギーが届くといわれています。これは新聞紙を広げた大きさで約450Wの家電製品を動かせるだけのエネルギーがとどいているということです。

 それでは、この太陽の光を生み出すエネルギーは、どこから来ているのでしょうか?
 太陽の重さは、前述のようにおよそ2×10^30kgという重さです。もしそれだけの量の化石燃料(石油や石炭など)があって、これだけのエネルギーを出し続けたら・・・太陽は数千年の寿命しかありません。
 では、太陽が放射するエネルギーが、太陽の自らの重さによる重力収縮によるエネルギーの一部開放である場合はどうでしょうか。これは太陽の重力により収縮することで熱くなり、その熱を放射するという考え方で、19世紀頃に提案されました。この説は、長い間信じられてきましたが、地球の地質学的・生物学的観点から地球の年齢が数十億年であることが分かると、この機構でも太陽が輝き続けられるのは、数千万年が精一杯ということになり、矛盾が生じました。このことから、重力収縮ではなく別のエネルギーが太陽を輝かせているということになりました。
その後、1930年代に原子核の核融合反応機構が明らかになり、太陽のエネルギー源は水素原子の核融合によるものだということで一応の決着を見ました。

では、太陽の核融合反応とはどういうものか見ていきましょう。
太陽の核融合反応は、太陽の中心において起きています。ここでは、1500万度という超高温下で水素の原子核同士が衝突しヘリウムとなります。 この過程で、陽電子、ニュートリノが生じます。ここで陽電子は電子と同等の反物質であり、陽電子と電子が衝突すればお互いに消滅し、その消滅による質量の減少でガンマ線が放出されます。全体として、この一連の反応で0.7%の質量がエネルギーになります。このときの質量欠損で生じる莫大なエネルギー(E=mc^2)が、太陽のエネルギーとなります。
ニュートリノは、物質と反応することはないため、ほぼ光速で太陽をすり抜けていきます。
一方、ガンマ線や陽電子は太陽内部の放射層に伝わり、その後対流層を経て表面に伝わります。この間にガンマ線は可視光や熱へと変化していきます。 ただし、その伝播速度は非常に遅く、一説では数万年〜数十万年かかるといわれています。一方がほぼ光速ですり抜け、もう一方が数万年ということから、太陽より発生するニュートリノを観測することで数万年〜数十万年先の太陽活動を予測することができます。
太陽は、この核融合反応によりエネルギーを得ており、およそ100億年間輝き続けることができます。

太陽の表面にみられる現象

 前述のように、太陽の表面は、「光球」と呼ばれています。太陽は地球や火星のように、ここからが地面ですよという境がありません。ですので、望遠鏡で観測できる表面を便宜上そう呼んでいるのです。
 光球の表面温度は、およそ6000度です。また、太陽の表面を拡大してみると、まだら模様が見られますが、これは「粒状斑」と呼ばれ、太陽表面のガスの対流渦でできる模様です。さし渡しの大きさは、1000km〜程度と言われています。大きいものは日本列島程度の大きさがあります。
 また、太陽表面には黒いしみのような模様がたまに見られることがありますが、これは「黒点」といって、太陽表面よりやや温度が低いためにそのように見えるのです。

黒点
By Ralf Weber

黒点は、太陽の活動が活発なときに多く見えることが多く、長いスパンで見れば11年周期で増減を繰り返すことがわかっています。ただしマウンダー極小期(1645〜1715年)のように長期間にわたり殆ど黒点のない時期や、ダルトン極小期(1790〜1830年)のように黒点数が少ない期間などもありました。

通常、黒点の大きさは直径が数千kmで大きいもので数万kmと地球がすっぽり入る大きさですが、非常にまれですが、地球の10倍近い大きさの黒点も現れることがあります。これは夕日や朝日のときに肉眼で見えることから「肉眼黒点」と呼ばれます。
  黒点は、日を置いてみるとゆっくりと太陽の表面を左から右へ移動しているのがわかります。これは太陽が自転している大きな証拠になります。
 一方、太陽表面より上空2000km〜10000km付近にはガス層が太陽を覆っており、これは「彩層」と呼ばれます。この中には水素のみならず様々な状態のガスを含んでおり、豊かな太陽表面を作り出しています。
 また彩層の一部が太陽より発する磁力線に沿ってさらに上層大気に噴出したものを「プロミネンス(紅炎)」と呼びます。望遠鏡で見ると、普段の太陽で一番エキサイティングな現象です。プロミネンスには、数日〜数ヶ月穏やかに太陽を覆う静穏型のものと、数十分〜数時間激しく動きまわる活動型の2種類があり、太陽のふちで、明るい炎を吹き上げたり、ループ状の構造として見えます。

プロミネンス

 プロミネンスは、地球から見たときに太陽のふちにあれば壮大な景色が見えますが、太陽表面と重なると太陽光を吸収するために黒い筋となって見えます。これを「ダークフィラメント」と呼びます。
 最後に黒点や、プロミネンスのあたりが非常に明るく輝くことがあります。これは「フレア」といい、太陽表面を覆う磁力線の構造が変わることにより生じる太陽表面の爆発現象です。そのエネルギーは水素爆弾数千万発を一度に爆発させたもので、ガンマ線、X線、高いエネルギーを持つ荷電粒子を大量に放出します。これは太陽風、あるいは太陽嵐として地球に到達し、人工衛星、船外活動をする宇宙飛行士に甚大な影響を及ぼすのは言うに及ばず、地球上においても磁気嵐が生じ、電力系統や電子機器類などに被害を及ぼす可能性があります。

太陽が作り出す幻想的な光 「コロナ」

 太陽表面から数万キロ、太陽を取り巻いている高温のガスは、「コロナ」と呼ばれる自由電子の散乱光、まるいは原子が電離した状態(プラズマ)のガスの集まりです。
 コロナは100万度の高温であり、太陽表面の温度とは桁違いに高くなっています。どうしてこのように高温になっているかは、現在のところ完全に解明されてはいません。
 コロナ自体はそれほど明るいものではなく、普段は強烈な太陽光線により見ることはできませんが、皆既日食のときに限り、太陽の光球からの光が月によってさえぎられるのでその姿をみることができます。そして見た人はその神秘に飲み込まれて「皆既日食病」を起こすようになるそうです・・・

最後に・・・

まだまだ、太陽の不思議はこんなものではありません。ここでは取り上げませんでしたが、太陽の力を左右し、地球を温暖化か、寒冷化かいずれかに導く鍵となる太陽を取り巻く磁力線の話など、非常に奥が深く・・・そして人間が知り尽くすことはできない星なのです。
太陽・・・不思議な星です。
太陽があればこそ、我々を含めた多くの生命体は、この地球上に生まれ進化してきました。
現在、数多くの恒星系に惑星があることが分かってきました。そして確認された惑星数はおよそ2000にもなるといいます。もしかしたら、私たちのような高度な知的生命体を宿している惑星もあるかもしれません。その知的生命体が、私たちの太陽を見たとき、どのように言うでしょうか。
あれほど力強く輝き、これほど慈悲深く生命を見守る恒星が、この宇宙にどれほどあるのか・・・私たちはもっと知らないといけません。

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